父が清掃の仕事を続ける中で、ずっと気になっていたものがありました。
それが「剥離廃液」の存在です。
床ワックスを剥がす作業の裏側では、強い薬剤を含んだ廃液が発生します。
ある日、父が行った実験で、清掃廃液をそのまま樹木に流したところ、翌日の朝に木が枯れてしまうという現実を目の当たりにしました。
清掃を生業としている者として、この現実は放置できないと考えたと聞いています。
環境への負荷はもちろん、業界としての責任を深く考えるきっかけとなったそうです。
父は、この廃液を「捨てる」のではなく「再利用する仕組みをつくる」ことを、会社の使命として取り組む決意をしました。
しかし、開発は決して簡単ではありませんでした。
・有害なポリマーの除去
・残渣の分離
・基準値までの浄化
この3つをクリアしなければ、社会に出せる仕組みにはなりません。
父が何度も試行錯誤を重ね、ようやく形になったのが現在の清掃廃液処理システムです。
このシステムにより、廃液は
・河川放流基準を満たす水
・発電用ペレットの原料
へと再資源化することが可能になりました。
さらに、焼却処理と比較してCO2を約60%削減できる結果も得られています。
弊社は、清掃という仕事は「きれいにすること」だけではないと考えています。
環境を守る仕事でもある――そう信じています。
私は2代目としてその想いを受け継ぎこの取り組みを、同じ課題意識を持つ企業とともに、全国へ広げる活動を進めています。
業界全体が変わらなければ、本当の意味での改善にはならないからです。
父から受け継いだ想いを、次の時代へ。
この小さな一歩が、未来につながると信じています。
清掃の現場では、床ワックスを剥がすたびに大量の「剥離廃液」が発生します。
強い薬剤やワックス成分を含むこの廃液は、長年、業界の中でも「処理が難しいもの」とされてきました。
適切な処理方法が確立されていなかった時代。
そのまま廃棄されることもあり、川の白濁や魚の大量死がニュースになることもありました。
「このままで本当にいいのか。」
その疑問から、株式会社グンビルの挑戦は始まりました。
2012年、利根川水系で発生した化学物質流出事故。
浄水場で有害物質が生成され、下流域では取水制限が発生しました。
水源地・群馬に生きる企業として、私たちは強い衝撃を受けました。
「自分たちの処理は本当に安全なのか。」
改めて自社の処理工程を徹底検証。
その結果、廃液に含まれる成分が、最終的に適切に分解・処理されていることを確認しました。
さらに、群馬工業高等専門学校 特命教授 小島昭様の助言を受けながら、環境負荷について研究を重ねました。
“見えない部分まで責任を持つ。”
それが、私たちの原点です。
研究を始めたのは平成14年。
当時、「剥離廃液を適正処理する」という考え方そのものが、まだ業界では一般的ではありませんでした。
しかし私たちは、
・作業性
・経済性
・環境性能
このすべてを両立する処理技術を目指しました。
何度も失敗し、何度も改良を重ね、たどり着いたテーマ。
それが、「ゼロエミッション」でした。
グンビルの処理システムは、剥離廃液を単に「捨てる」のではありません。
廃液を、「水」「ワックス成分」「残さ」に分離し、さらに再資源化します。
取り出したワックス成分は固形燃料として再利用され、発電エネルギーへ生まれ変わります。
これは単なる廃棄ではなく、「循環型処理」への転換でした。
1. 発電燃料への再資源化
ワックス成分を固形燃料化することで、発電所燃料として再利用。
1トンのワックス成分から生まれる電力は、一般家庭約半年分に相当します。
2. 厳しい排水基準をクリア
二段階処理により、水源地・群馬県の厳しい放流水基準をクリア。
環境への安全性を徹底的に追求しました。
3. CO₂排出を約60%削減
従来の焼却処理と比較し、大幅なCO₂削減を実現。
環境負荷低減にも貢献しています。
4. ゼロエミッションの達成
「廃棄する」のではなく、「循環させる」。
剥離廃液処理において、資源循環型モデルを構築しました。
技術が完成しても、実用化への道は簡単ではありませんでした。中間処理業として許可を取得するには、前例のない技術に対して、行政へ一つひとつ説明しなければなりませんでした。
担当者変更、長期協議、膨大な水質検査。
許可までに4年以上。
「なぜそこまでやるのか。」
そう問われることもありました。
それでも私たちは、歩みを止めませんでした。
私たちは、有志企業とともに
「剥離廃液を適正に処理する会」を立ち上げました。
目指すのは、
「未処理の剥離廃液を、一切流さない社会」
です。
環境対策は、特別なことではなく、当たり前になるべきもの。
そのために、全国へ技術を広げ、地域ごとのネットワークづくりを進めています。
子どもの頃、川で遊んだ記憶。
澄んだ水、魚の群れ、夕暮れの景色。
その自然を、次の世代へ残したい。
この想いこそが、グンビルの原動力です。
清掃の裏側で発生する廃液にも、責任を持つ。
見えない部分まで誠実に向き合う。
それが、私たちの使命です。